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化粧品の世界で、パラダイムシフトが起きている

これまで化粧品の世界は、油分や有効成分を「補う」ということが主軸となってきました。しかし、前述のように補うだけの美容法は、限界があるのも事実でした。これまでは不治の病といわれていたさまざまな病気に対する医療技術が発展しているのと同じように、美容の分野でもこの壁を超えるような革新が起き始めています。それが、化学の観点から開発・発展されてきた「補う」スキンケアから、生物学的観点から開発された「再生して防衛する」という全く新しい発想のスキンケアへのパラダイムシフトです。こうした生物学的観点から開発されたエイジングケアの中で、現在、最も注目されているのが幹細胞培養液です。

幹細胞というと、ES細胞やiPS細胞を使うのかと勘違いしている方も多いと思います。ES細胞はヒトの受精卵を使い、iPS細胞は遺伝子操作をするため、どちらも倫理や遺伝子の問題があり、美容の世界への応用には、まだまだ時間がかかりそうです。幹細胞培養液は、他人の受精卵や特殊な遺伝子操作を行わずに、ヒトの細胞、特に太ももや腹部の脂肪組織に多く含まれる幹細胞を取り出して培養したもので、さまざまな細胞や組織を活性させる効果を持っていることが明らかになっています。「ヒト脂肪由来幹細胞」というものが一般的で、厳格な適合検査を繰り返した健康なドナー(提供者)から採取した脂肪組織を遠心分離器や酵素反応させることで、幹細胞のみを採取します。

これを凍結保存して、ウインドウピリオド(ウイルスなどの潜伏期間リスク)回避のためにドナーの経過検査を経て初回の培養を行い、その培養液を医薬品と同様の安全検査(GIP)を行って採取した幹細胞の安全性を確認します。さらに生産ロット毎に細菌検査やウイルス検査や品質評価検査などを行って、全ての安全性をクリアしたものだけが幹細胞培養液として利用されています。また幹細胞培養液は、医学の世界では、既に以前から病気の治療や美肌再生、頭髪再生の分野での活用が進んでいます。このようにヒトの成体幹細胞を使った再生医療は、ES細胞やiPS細胞よりも、解決すべき課題が少なく、ヒトへの応用が簡単なために、現実的な再生医療の世界では、最も注目されているのです。

特に太ももやお腹の脂肪組織には、成体幹細胞が豊富に含まれており、それを培養した幹細胞培養液を用いた再生医療や美容医療への応用が最も実用化が進んでいます。肌のエイジングケアの場合、注射や点滴などを行わなくても、肌に塗布するだけでどんな効果があるのかが検証されています。たとえば幹細胞培養液を塗ることで、塗らなかった場合よりも、肌の細胞を生み出す種に当たる線維芽細胞の数が増えることが明らかになっています。これによって、肌の新陳代謝の遅れを改善し、若い頃と同じような肌の再生能力を維持することも可能になることが想定でき、いつまでも若々しい肌を保てるかもしれません。

この影響によって、新しく元気な肌の細胞が美肌成分も生み出してくれるようで、コラーゲン、ヒアルロン酸の発現も促進することが明らかになつています。またシワの数も減り、シワの深さも浅くなり、シワが全体的に目立たなくなることも確認されています。見た目だけでなく、皮膚のバリア機能を高めたり、肌の細胞の分裂を増やして、肌の新陳代謝を活発にしてくれることも判明しました。ヒト幹細胞培養液を肌に塗ることで、紫外線を浴びると活発になるメラノサイトやチロシナーゼという黒いシミを作る物質の発現を抑制して、シミやくすみを防ぐ効果や、できてしまったシミを薄くして、肌を全体的に白くする効果も確認されています。