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細胞の再生は痛くもないし、怖くもない

この中にもある線維芽細胞成長因子(aFGF)は、すでに医療でも2005年頃から活用されています。手術後の傷口、やけどの傷口などに線維芽細胞成長因子を含んだスプレーを吹きかけると、スプレーの中にある成長(増殖)因子が、傷口の真皮にある線維芽細胞にサインを送り、線維芽細胞を増殖させて、さらにコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチン、新しい血管などをつくって、傷を修復し、肌の再生を速やかに促進してくれるため、治療期間が大幅に短縮されました。

成長(増殖)因子の美容への応用は、2001年に世界初の成長(増殖)因子の成分を含んだクリームを肌に1日2回約6週間塗り続けると、コラーゲンの産出、ヒアルロン酸の産出、エラスチンの産出、線維芽細胞の増加および皮膚の厚みが著しく増大したことから、成長(増殖)因子の実力が、皮膚科学の世界で認められました。成長(増殖)因子を頭皮に注射したり塗ったりすると、毛母細胞に刺激を与えて、発毛、増毛効果が得られることも明らかになっており、一部の美容皮膚科を中心に、この施術を受けることができます。

幹細胞自体を注入しなくても、幹細胞が増殖するときに分泌する成長(増殖)因子で、細胞の再生は可能なのです。しかも注射などをせずに、クリームを肌に塗る、肌にスプレーを吹き付けるだけでも効果が得られるのです。痛くもないし、怖くもありません。とても手軽です。医療の現場で傷の修復を早める効果が認められている成長(増殖)因子の実力を、肌のアンチエイジングに活用できる時代が到来したのです。

細胞から若返るのが究極のアンチエイジング

このように実際に病気の治療にも応用が期待される幹細胞培養液ですが、肌の若返りにも大いに期待が寄せられ、実際にヒト幹細胞培養液を使ったスキンケア製品が発売されています。つまり最先端の医学や生命科学の成果を使って、細胞美人になる方法が実現したのです。素晴らしいことです。そして今までの角層に美肌成分を浸透させて肌老化を修復することしかできなかったスキンケアの常識がガラリと進化して、細胞から若返るという根本からのアンチエイジングが実現できるようになったのです。スキンケア用に開発されたヒト幹細胞培養液は、そのほとんどが脂肪組織から抽出された幹細胞を使ってつくったもので正式な名称は「ヒト脂肪細胞順化培養液エキス」です。

この中に、皮膚の幹細胞を元気にするパワーの源がたくさん入っているのです。いったいこのヒト脂肪細胞順化培養液エキスにはどんな若返りのパワーが含まれているのでしょうか。スキンケア用に開発された幹細胞培養液である「ヒト脂肪細胞順化培養液エキス」の中には、成長(増殖)因子や酵素、SOD(抗酸化酵素:細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素)、コラーゲンやヒアルロン酸など、細胞外マトリックス成分が豊富に含まれています。肌の中で発生した活性酸素を除去する働きを高めます。成長(増殖)因子とは、簡単に言うと、細胞から細胞に情報やサインを送るタンパク質です。

たとえば肌の真皮にあるコラーゲンが不足していることを察知した幹細胞は、「幹細胞を増やせ」と「コラーゲンを増やせ」というサインを出す成長(増殖)因子を分泌します。そのサインを受け取った別の細胞の表面に成長(増殖)因子がくっついて、コラーゲンの設計図になる遺伝子を細胞の核の中から取り出すためのカギ穴(レセプター)を見つけて、成長(増殖)因子がカギ(リガンド)になって、細胞のドアを開け、遺伝子情報を取り出して、タンパク質を結合させながら、新しいコラーゲンを再生し、また別の細胞にサインを伝達するための成長(増殖)因子や、活性酸素を中和するSOD(抗酸化酵素)も一緒につくられます。

幹細胞の分泌液は、再生医療に期待されている

ヒト幹細胞培養液は、再生医療にも応用が期待されています。たとえば、ヒトの骨髄から採った幹細胞が分泌した培養液をスポンジに浸み込ませて、イヌの歯ぐきの骨を5ミリ削ってその部分にスポンジを充てておくと、約4週間後に、歯ぐきの骨、骨と菌をつなぐじん帯、歯のセメント質が3ミリほど再生しました。これは、幹細胞培養液に含まれる増殖因子(グロスファクター)が、欠損した部分の周辺にいる幹細胞に幹細胞増殖をスタートさせるサインを送って、失った菌や歯ぐきの骨を再生したのではないかと分析されています。

ヒトへの応用が安全であると検証されれば、幹細胞培兼液を歯周病などで失った歯や歯ぐきを再生して治療する方法に応用でき、大いに期待されています。ヒトの乳歯から採った幹細胞を培養した幹細胞培養液を、脳梗塞を起こして足が動かなくなったラットに2週間、毎日点鼻したところ、6日後には歩けるようになり、脳梗塞を起こした部分も縮小したことが報告されています。

これも幹細胞培養液の増殖因子(グロスファクター)が、脳梗塞を起こして壊死した脳細胞の近くにある幹細胞に増殖を促すサインを送り、幹細胞を活性化させて、脳の細胞を修復したものと推察されています。これがヒトに応用されれば、全国に約140万人もいる脳梗塞患者の治療に使って、失われた脳の機能を回復させることで、運動機能障害やまひ、言語障害などを予防・治療することができるかもしれないと期待されています。

化粧品の世界で、パラダイムシフトが起きている

これまで化粧品の世界は、油分や有効成分を「補う」ということが主軸となってきました。しかし、前述のように補うだけの美容法は、限界があるのも事実でした。これまでは不治の病といわれていたさまざまな病気に対する医療技術が発展しているのと同じように、美容の分野でもこの壁を超えるような革新が起き始めています。それが、化学の観点から開発・発展されてきた「補う」スキンケアから、生物学的観点から開発された「再生して防衛する」という全く新しい発想のスキンケアへのパラダイムシフトです。こうした生物学的観点から開発されたエイジングケアの中で、現在、最も注目されているのが幹細胞培養液です。

幹細胞というと、ES細胞やiPS細胞を使うのかと勘違いしている方も多いと思います。ES細胞はヒトの受精卵を使い、iPS細胞は遺伝子操作をするため、どちらも倫理や遺伝子の問題があり、美容の世界への応用には、まだまだ時間がかかりそうです。幹細胞培養液は、他人の受精卵や特殊な遺伝子操作を行わずに、ヒトの細胞、特に太ももや腹部の脂肪組織に多く含まれる幹細胞を取り出して培養したもので、さまざまな細胞や組織を活性させる効果を持っていることが明らかになっています。「ヒト脂肪由来幹細胞」というものが一般的で、厳格な適合検査を繰り返した健康なドナー(提供者)から採取した脂肪組織を遠心分離器や酵素反応させることで、幹細胞のみを採取します。

これを凍結保存して、ウインドウピリオド(ウイルスなどの潜伏期間リスク)回避のためにドナーの経過検査を経て初回の培養を行い、その培養液を医薬品と同様の安全検査(GIP)を行って採取した幹細胞の安全性を確認します。さらに生産ロット毎に細菌検査やウイルス検査や品質評価検査などを行って、全ての安全性をクリアしたものだけが幹細胞培養液として利用されています。また幹細胞培養液は、医学の世界では、既に以前から病気の治療や美肌再生、頭髪再生の分野での活用が進んでいます。このようにヒトの成体幹細胞を使った再生医療は、ES細胞やiPS細胞よりも、解決すべき課題が少なく、ヒトへの応用が簡単なために、現実的な再生医療の世界では、最も注目されているのです。

特に太ももやお腹の脂肪組織には、成体幹細胞が豊富に含まれており、それを培養した幹細胞培養液を用いた再生医療や美容医療への応用が最も実用化が進んでいます。肌のエイジングケアの場合、注射や点滴などを行わなくても、肌に塗布するだけでどんな効果があるのかが検証されています。たとえば幹細胞培養液を塗ることで、塗らなかった場合よりも、肌の細胞を生み出す種に当たる線維芽細胞の数が増えることが明らかになっています。これによって、肌の新陳代謝の遅れを改善し、若い頃と同じような肌の再生能力を維持することも可能になることが想定でき、いつまでも若々しい肌を保てるかもしれません。

この影響によって、新しく元気な肌の細胞が美肌成分も生み出してくれるようで、コラーゲン、ヒアルロン酸の発現も促進することが明らかになつています。またシワの数も減り、シワの深さも浅くなり、シワが全体的に目立たなくなることも確認されています。見た目だけでなく、皮膚のバリア機能を高めたり、肌の細胞の分裂を増やして、肌の新陳代謝を活発にしてくれることも判明しました。ヒト幹細胞培養液を肌に塗ることで、紫外線を浴びると活発になるメラノサイトやチロシナーゼという黒いシミを作る物質の発現を抑制して、シミやくすみを防ぐ効果や、できてしまったシミを薄くして、肌を全体的に白くする効果も確認されています。

細胞レベルで取り組むアンチエイジング

今までも、肌老化に抗うためのアイテムは多数登場しましたが、そのほとんどが「肌の表面に不足している成分を補うもの」でした。水分、油分などのバランスを整え、加齢と共に減少する皮脂の分泌や新陳代謝の遅れを外側から塗って補うというコンセプトがほとんどです。最近では、肌の真皮にあるハリや弾力のもとになるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどの美肌のもととなるタンパク質を補うというコンセプトのものも多くみられます。しかしこれらは全て、「健康な肌を生み出す細胞が十分に存在する」という前提がなければ、焼け石に水となってしまいます。

どんなに美容成分を与えようとしても、それに反応して活用する幹細胞がなければ、意味がありません。そこで必要になるのが「細胞レベルのアプローチ」、つまり幹細胞を増やす、補うという働きを持つ美容のアプローチが、肌の根本的な若返りには必要不可欠なのです。もちろん、水分、油分、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンなどは、とても重要な美容成分です。しかしその前に、その美容成分を活用することのできる元気な細胞が、肌に存在していることが大切なのです。そこでポイントとなるのが、前述の再生医療の美容分野への応用です。

幹細胞という万能細胞を使って若返る方法は、魅力的ではありますが、かなり高価な治療法になるため、誰でも手軽に受けられるものではありません。しかし最近では、幹細胞を移植するのではなく、「幹細胞が分泌する成分」を使ってそれを再生医療に応用する方法が注目されています。この方法に用いられるのが「幹細胞培養液」で、ヒトの幹細胞を培養する際に幹細胞自身が分泌する成分がたっぶりと含まれています。幹細胞は自分が増殖するときに「これから幹細胞の増殖をスタートするぞ」というサインを出すタンパク質(これを成長因子、増殖因子、グロスファククーと呼びます)を幹細胞自身が生み出すのです。これによって幹細胞自身が細胞分裂をスタートします。

この「これから増殖するサイン」こそが、幹細胞培養液に含まれる成分で、しかもこのサインは1種類だけでなく約200種類以上も含まれているのです。幹細胞が増殖するためには、実に200種類以上のタンパク質によるサイン、合図、号令が必要なのです。幹細胞以外の細胞は、増殖する際にこんなにたくさんのサインを必要とはしません。しかし幹細胞はどんな細胞にもなれる万能で特殊、そして稀少な細胞なので、数多くのサインを分泌するのです。幹細胞培養液は、言ってみれば、幹細胞の増殖のサインを出し、さらに幹細胞の増殖を応援するサポーターでもあるので、幹細胞が増殖するためには必要不可欠なものです。

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